アイリッシュ音楽で頻出するスケールは、DとGをルートとするイオニアンスケール、AとDをルートとするミクソリディアンスケール、EとAをルートとするドリアンスケール、BとEをルートとするエオリアンスケールなどだ。逆に言えば、大半の曲はこの8つのスケールに収まってしまう。その8つの中でも下に行くにしたがって頻度が減る。
(例)
D Ionianの例 – 無数にあります
G Ionianの例 – 無数にあります
D Mixolydianの例 – Banish Misfortune (この曲は曲の中でIonianと行き来してる)
A Mixolydianの例 – High Reel
E Dorianの例 – Cooley’s Reel、Morrison’s Jig
A Dorianの例 – Congress Reel
Bm Aeolianの例 – Ballivanich
Em Aeolianの例 – Gallaghers’s Frolics

なぜこれらに限定されるのか。それは使用楽器の特性から来ているのであろう。パイプ類はD管と呼ばれるレミファ#ソラシドレ音階の構造を持つものが基本で、これは穴の数が少ない原始的な楽器なので、そもそも演奏しやすい音階が限定されるのだ。平たく言えばそれがD調とG調で、ミクソリディアン以下のモード音階はその変形なのだ。

以下は、D Ionian、A Mixolydian、E Dorian、B Aeolianを並べてみたものである。
シャープの位置が同じであることがわかる。つまり、弾きやすいのである。

Scales based on Dmajor:
———————–
D major/D Ionian: D E F# G A B C# d
A Mixolydian: A B C# d e f# g a
E Dorian: E F# G A B C# d e
B Natural minor/Aeolian: B C# d e f# g a b

同様に、G Ionian、D Mixolydian、A Dorian、E Aeolianを並べてみたものである。
こちらもシャープの位置が同じであることがわかる。

Scales based on Gmajor:
———————–
G major/G Ionian: G A B C D E F# g
D Mixolydian: D E F# g a b c d
A Dorian: A B C D E F# g a
E Natural minor/Aeolian: E F# g a b c d e

(出展 https://hspeek.home.xs4all.nl/dadgad/theory.html を筆者一部改訂)

なお、この延長線上で考えて、GリディアンやF#フリジアンの曲があってもおかしくないと思うのだが、テーマがずれるので別稿としよう。